芦川いづみさん

 日活のトップ女優として日本映画界の黎明期に大活躍だった芦川いづみさん。結婚を機にあっさりと芸能活動から引退をされました。
 2023年は芦川いづみさんのデビュー70周年でした。2月に主演映画「知と愛の出発」が公開以来となるカラー復刻版でDVDリリースされ、3月には神保町シアターで特集上映「デビュー70周年記念 恋する女優芦川いづみ」の開催や、CS映画チャンネル「映画・チャンネルNECO」で「特集 デビュー70周年 女優・芦川いづみ」の放送がありました。
 活躍されていた時代を直接知る人からは、未だに引退を惜しむ声があり、当時を知らない世代にとっては、謎の多い大女優の一人です。そんな芦川いづみさんを今回、経歴や私生活について調べてみました。

 芦川いづみさんは、日本映画界の黎明期を支えてきた女優の一人と言っても過言ではないでしょう。可愛いだけでなく、品がある芦川いづみさんに世の男性が虜になっていました。
 芦川いづみさんは、本名を「伊藤幸子(旧姓:芦川)」と言い、1935年10月6日生まれ、東京市滝野川区田畑町(現在は、北区田畑)の出身です。
 最終学歴は、松竹歌劇団付属松竹音楽舞踏学校です。1952年に、16歳の時に、神奈川県でも有数の名門校である法政大学潤光女子高校を中退して、松竹音楽舞踏学校に入学しました。
 松竹音楽舞踏学校の同期には、野添ひとみらがいます。入学時に芸名を「芦川いづみ」とされたそうです。容姿端麗で頭脳明晰だったことが学歴からもよくわかります。まさに才色兼備だったと言えそうです。淡路恵子さんや草笛光子さんなど多くの著名人を輩出した松竹音楽舞踏学校に集まるのは、ダイアの原石と呼べる生徒ばかりだったそうです。
 その中でも目立つ存在だったという芦川いづみさん、1953年に出演したファッションショーで、当時松竹の映画監督をされていた川島雄三さんの目に留まると、映画「東京マダムと大阪夫人」で、銀幕にデビューすることになりました。
 その2年後の1955年に川島雄三さんは日活に移籍します。川島雄三さんから推薦を受けた芦川いづみさんも松竹歌劇団を退団し日活に入りました。
 日活入社後は数多くの作品に出演し、瞬く間に日活を代表する女優の一人として知られるようになります。


 その人気を不動のものとしたのが1956年の映画「乳母車」です。この作品で石原裕次郎さんと初共演を果たし、その後長きにわたって石原裕次郎さんの相手役を務め、日活トップ女優の地位を確固たるものとしました。この出会いが後に意外な幸運をもたらすのです。


 芦川いづみさんは1968年に俳優の藤竜也さんと結婚し、芸能界を引退されます。トップ女優の結婚と引退は当時、大きな話題となったそうです。結婚後はすっぱりと芸能界から身を引き、その後も芸能活動をすることはありませんでした。
 唯一姿を見せたのが2007年に「俳優俱楽部」と「旧友会」の合同パーティーでした。芦川いづみさんが公の場に姿を現したことは、大きく報じられています。芸能界では、結婚、出産を機に「ママタレ」として活動するタレントも現在では少なくありません。それだけに時代背景もあるのでしょうが、綺麗に身を引いた芦川いづみさんは素晴らしいと評価されています。
 大勢の前に姿を見せたのは2007年が最後ですが、その後も仕事されています。
 2018年は、芦川いづみさんのデビュー65周年であり、様々な企画が展開されました。その中で、出演した映画10本のDVDが新たにリリースされています。当時の芦川いづみさんは、そのDVDに収録する音声特典を収録しています。商品を購入したファンは、芦川いづみさん本人による作品解説をとても喜んだようです。これらのアニバーサリー企画以降、芦川いづみさんの最新の声は表に出ていません。芦川いづみさん本人も、最後のつもりに収録に臨んだと言います。
 夫である藤竜也さんは、寝る前に妻と握手を交わしていることを以前から話しています。2022年に「徹子の部屋」にゲスト出演した際の藤竜也さんは、スクワット握手について語っていました。おそらく2024年現在も続けているものと思われます。結婚生活55年を迎えるにもかかわらず、夫婦仲がとても良いと話題の、藤竜也さん・芦川いづみさんご夫妻。
 2018年には結婚50周年にあたる金婚式を迎え、今も夫婦仲良く暮らしています。お二人とも80歳を超えていますが、今でも寝る前に二人ですることがあるそうです。それは「スクワット」だと言います。二人で手をつないで、スクワットを50回行うそうです。これが「スクワット握手」だとのことです。健康のために続けているそうです。「若い時のようにねハグしたりとか、それはちょっとやりにくいですよね。するとやっぱり一日に1回ぐらいはそのぐらい触らせてもらった方が。」と語り、番組の中では、出かけるときに手をつなぐ話も出ていました。
 それでは一体なぜ、握手をするのかというと、「翌日は会えない可能性もあるから」と述べられています。ブラックジョークを交えて話していたことがあります。二人とも高齢で、足元に注意が必要なこともあり、支えあうように外出しているとのことです。近年のこうしたエピソードからは、おしどり夫婦であることが伝わってきます。
 芸能界を引退した芦川いづみさんは、一般人として幸せな生活を送っているようです。


 1968年に俳優の藤竜也さんと結婚し、芸能界を引退した芦川いづみさん。当時の芦川いづみさんは日活の大スターでした。一方藤竜也さんは、まだまだ駆け出しの俳優でした。今なら格差婚と言われるのでしょう。そのため二人の所属会社であった日活は、二人の結婚に反対したそうです。会社に反対された状態で結婚するのは至難の業でした。下手をすればお二人ともそのまま芸能界から干されてしまう危険すらあります。


 そんな芦川いづみさんと藤竜也さんが結婚できるように尽力してくれたのが、なんとあの石原裕次郎さんだったそうです。そこには日活映画の重役たちがずらりと大集合していたそうです。そんな重役たちを前にして石原裕次郎さんは、驚きの言葉を述べています。「藤竜也と芦川いづみが結婚することになったからよろしく」といきなり言ったそうです。重役たちは一斉に藤竜也さんを睨みつけたらしいのですが、石原裕次郎さんの言葉に反論する人は、一人もいなかったそうです。
 周囲から反対されて結婚されたお二人ですが、この一件で結婚を許されたそうです。藤竜也さんは、石原裕次郎さんがいなければ結婚できなかったと語っています。
 石原裕次郎さんのおかけで無事結婚されたお二人ですが、それでも当時は相当お金に困っていたといいます。看板女優との結婚だというのに、お金がないというのは意外な感じもします。結婚式は挙げたものの、料理を用意するお金まではなかったらしく、「今、僕にできるのはこれしかないのでこれで勘弁してください。そのかわり、お祝いのお金は持ってこなくていい。」と伝えました。そして、なけなしのお金でサンドイッチと唐揚げを出したそうです。それでも楽しい結婚式だったと言います。
 そして結婚式でも石原裕次郎さんが助けてくれたそうです。お金がなかった藤竜也さんにタキシードを用意してくれたり、たくさんの人を呼んでくれたりしたと言います。石原裕次郎さんは後輩思いで、本当に素晴らしい人だったということがわかります。
 格差婚と言われ続けましたが、藤竜也さんは結婚後に俳優としてさらに活躍していくことになります。格差婚を意識していないような発言をしていた藤竜也さんですが、唯一守り抜いた信念があります。「藤竜也なんてどこの馬の骨ともわからないやつと一緒になるから不幸になるんだ。」と思われないように、そして芦川いづみさんが白い目で見られないように、それまで以上に頑張ったと言います。
 後輩の結婚のためにここまでしてくれる人は決して多くはないでしょう。石原裕次郎さんが今もなお、多くの人たちに慕われている理由もよくわかります。藤竜也さんが「石原裕次郎さんがいなければ結婚できなかった」と語るのも納得です。
 石原裕次郎さんのおかげで芦川いづみさんと結婚することができた藤竜也さんは、結婚後8年後の1976年に出演した大島渚監督の映画「愛のコリーダ」で俳優としての知名度は大きく上がります。その後も多くの映画やドラマ、CMに出演し、日本を代表する名優となりました。自分と結婚したことで芦川いづみさんが悪く言われないように、と常に思っていた藤竜也さん。きっと藤竜也さんのそんなまじめなところを芦川いづみさんは見抜いて、惹かれたのでしょう。
 無事に1968年に結婚したお二人ですが、2人の間には1971年に息子がお一人誕生されています。息子について積極的に藤竜也さんは語っていませんが、息子の話題がNGということではないようです。聞かれたら答えるものの、息子が特定されるような情報は明かしていません。芸能界に入りそうなものですが、どうも一般人として生活されているようです。
 芦川いづみさんは、有名校を退学して芸能学校に入学したり、無名の俳優と結婚されたり、意志のつよい女性であることがよくわかります。藤竜也さんも芦川いづみさんのと結婚や芦川いづみさんの女優引退は、プレッシャーになったことと思いますが、夫の才能を見抜き、その才能を後押ししてきた芦川いづみさん。地位や名誉を潔く捨てて、ご本人は大したことではないと言うかもしれませんが、なかなかできることではありません。俳優として才能のあった藤竜也さんの妻に相応しい人は芦川いづみさん以外にいなかったことでしょう。藤竜也さんは普段の生活でも芦川いづみさんがいないとどうしようと思ってしまうそうですが、少し驚きとうらやましさを感じます。

 高齢になられた芦川いづみさんですが、これからも藤竜也さんと寄り添って長生きして欲しいものです。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

Copy Protected by Chetan's WP-Copyprotect.