マレーシア・ボルネオ島の猫の街、クチン(Kuching)。 古き良きコロニアル建築や豊かな熱帯雨林で知られるこの街がいま、東南アジアでも最先端の「エコな未来都市」へと生まれ変わろうとしています。
その中心にあるのが、次世代交通システム「ART(Autonomous Rapid Transit)」です。
「線路がない電車?」「水素で走る?」と話題のこの乗り物。今回は、クチンで建設が進むARTの正体と、それによって変わりゆく街の現在の様子をレポートします。
そもそも「ART」って何?
ART(Autonomous Rapid Transit)は、一言でいうと「電車とバスのいいとこ取り」をした新しい公共交通機関です。
見た目は路面電車(トラム)のように連結した車両ですが、実はこれ、線路がありません。
ARTのすごい特徴3つ
線路不要(Trackless): 道路上の仮想軌道をセンサーで読み取り、ゴムタイヤで走行します。
水素で走る(Eco-Friendly): 動力は水素燃料電池。排出するのは「水」だけの究極のエコ車両です。
乗り心地は電車級: バスのような揺れが少なく、スムーズで静かな移動が可能です。
地下鉄を掘るコストを抑えつつ、バス以上の輸送力を確保できるため、渋滞解消の切り札として導入が決まりました。
クチンのどこを走るの?(旅行者へのメリット)
現在計画されている「KUTS(Kuching Urban Transportation System)」プロジェクトでは、主に以下の3つのラインが建設中です。
🟦 ブルーライン: サマラハン(大学エリア) ⇔ 市内中心部
🟥 レッドライン: クチン国際空港 ⇔ クチン・セントラル ⇔ 市内
🟩 グリーンライン: 市内 ⇔ ダマイビーチ(リゾートエリア)
特に旅行者にとって嬉しいのがレッドラインとグリーンライン。 完成すれば、空港から市内への移動や、ダマイビーチへの観光が、渋滞知らずで格段にスムーズになります。2026年から段階的に運行開始予定とのことで、期待が高まります!
2025年現在、クチンの街の様子は?
未来への期待は大きいですが、現在はまさに「建設ラッシュ」の真っ最中です。
実際にクチン市内を歩いてみると、空港周辺や主要道路(Jalan Tun Jugahなど)の中央分離帯では大規模な工事が行われています。「ART専用レーン」や「駅」を作るため、至る所で重機が動いています。
地元の人々の反応
「完成したら便利になる!」という期待の声がある一方で、現在は工事による車線規制や渋滞が発生しているため、ドライバーからは「今は我慢の時期だね(Sabar saja)」という声も聞こえてきます。
これからクチンへ行く方へのアドバイス
もし近々クチンへの渡航を予定されているなら、以下の点に注意するとより快適に過ごせます。
移動時間は余裕を持って: 工事エリア周辺は渋滞しやすくなっています。Grab(配車アプリ)を利用する際は、通常より10〜15分早めに手配しましょう。
空港移動は早めに: 空港周辺も工事の影響を受けています。帰国時は早めに空港へ向かうのが安心です。
進化の過程を楽しむ: 道路の真ん中に近未来的な駅ができあがっていく様子は、今しか見られない光景です。「変わりゆくクチン」を目撃するチャンスと捉えてみてはいかがでしょうか。
まとめ
クチンのARTは、単なる新しい乗り物ではなく、サラワク州が目指す「水素社会」のシンボルです。 数年後、私たちが再びクチンを訪れる頃には、静かでクリーンな水素トラムが街を滑るように走っているはずです。
古き良き街並みと、最新テクノロジーが融合する新しいクチン。これからの進化から目が離せません!
