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はじめに:画面越しの笑顔に隠された「20年」の重み
テレビ番組やイベントで見せる、明るく爽やかな笑顔。フリーアナウンサーとして活躍する岩佐まりさんの姿を見て、彼女が20年以上もの間、深刻な介護の現場に身を置いてきたと即座に察せる人は少ないかもしれません。
10代の終わりに母の異変に気づき、20代のすべてを介護に捧げ、そして今、40代で育児と介護を同時に担う「ダブルケア」という新たなステージに立つ岩佐さん。彼女の歩みは、単なる「苦労話」ではありません。それは、一人の女性が絶望の淵から這い上がり、自分の人生を諦めないと決めた、希望と執念の物語です。
今回は、岩佐まりさんの知られざる介護生活の裏側と、彼女がなぜ今、過酷な状況下で出産という道を選んだのか、その覚悟に迫ります。
1. 20歳で始まった「シングル介護」という孤独
岩佐まりさんの介護生活は、彼女がまだ夢を追いかけていた20歳の頃に始まりました。お母様が「若年性アルツハイマー型認知症」を発症したのです。
当時の彼女は、華やかな芸能界・放送業界での活躍を夢見る若者でした。しかし、現実は残酷でした。記憶を失い、昨日までできていたことができなくなっていく母親。徘徊や暴言、そして排泄の失敗。20代の女性が直面するにはあまりにも重い現実が、彼女の肩にのしかかりました。
特に辛かったのは、**「誰にも相談できなかったこと」**だと言います。 同世代の友人が恋や仕事に夢中になっている中、彼女は一人、深夜までおむつを替え、母の介護に追われていました。「同情されたくない」「介護をしている自分を知られたくない」という思いから、周囲には明るく振る舞い、独りで孤独を抱え込む「シングル介護」の日々が続いたのです。
2. アナウンサーとしての矜持と、在宅介護へのこだわり
岩佐さんは、介護のために自分のキャリアを諦めることはしませんでした。むしろ、「母を守るためには、自分がしっかり稼がなければならない」という強い意志で、フリーアナウンサーとしての仕事を勝ち取っていきました。
驚くべきは、その働き方です。 早朝に母をデイサービスへ送り出し、現場では何事もなかったかのようにカメラの前でニュースを読み、番組を盛り上げる。放送が終われば、急いでスーパーに寄り、母を迎えに行く。テレビで見せるあの明るい様子からは、家で寝たきりに近い母をケアしている姿など微塵も想像できません。
彼女は、社会福祉士の資格を取得するなど、独学で専門知識を身につけました。それは「ただ助けてもらう」のではなく、「母にとって最善のケアを、娘である自分がプロとして提供する」という、母への深い愛とプライドの現れでした。
3. 奇跡の再会と、40歳での大きな決断
そんな孤独な戦いを続けてきた岩佐さんに、転機が訪れます。中学時代の初恋の相手との再会、そして結婚です。
長年「一人で背負うのが当たり前」だった彼女にとって、家族が増えることは大きな変化でした。そして彼女は、さらなる大きな決断を下します。それが**「高齢出産」**です。
お母様は現在、要介護5。胃ろうを使い、痰の吸引も必要な状態です。そんな中での育児は、普通に考えれば「無理だ」と周囲に止められても不思議ではありません。しかし、彼女には一つの強い思いがありました。
「母が元気だった頃、『まりは自分の人生を楽しみなさい』と言ってくれた。もし介護を理由に子供を諦めたら、母は自分を責めるかもしれない。母が望んだ私らしい人生を生きることこそが、最高の親孝行になる」
2023年に39歳で第1子を出産。さらに2025年には第2子の妊娠を公表。40代、重度の介護と乳幼児の育児が重なる「ダブルケア」の道へと、彼女は自ら踏み出したのです。
4. 「ダブルケア」のリアル:綺麗事では済まない日常
現在、岩佐さんのSNSやブログには、凄絶なまでの日常が綴られています。
- 赤ちゃんの泣き声と、お母様の吸引のアラームが同時に鳴り響く夜。
- 大きなお腹で、寝たきりのお母様を介護用ベッドから車椅子へ移乗させる過酷さ。
- 離乳食と、お母様の介護食(とろみ食)を同時に作るキッチン。
そこには、テレビのバラエティ番組で語られるような「感動の介護物語」を越えた、剥き出しの現実があります。しかし、岩佐さんの発信が多くの人を惹きつけるのは、彼女がその過酷さを隠さず、かつ「ユーモア」を忘れないからです。
時折見せる、赤ちゃんとお母様が触れ合う写真。そこには、言葉は通じなくても、確かに流れる「命のバトン」が見えます。彼女は、介護を「人生の重荷」ではなく、「人生の一部」として取り込むことで、新しい家族の形を証明しようとしています。
5. 私たちが岩佐まりさんから学べること
岩佐まりさんの生き方は、私たちに大切なことを教えてくれます。
- 「助けを求めること」の勇気: かつて独りで抱え込んだ彼女が、今は夫や社会的なサポートを使いながら、堂々と助けを求めて生きています。
- 「自分の人生を諦めない」強さ: どんなに過酷な状況でも、自分のやりたいこと(結婚、出産、仕事)を諦めない姿勢は、現代を生きるすべての人へのエールです。
- 介護のイメージを変える: 「暗くて辛い」介護のイメージを、専門知識と愛を持って「工夫しがいのある日常」へと変えていく発信力。
結びに:岩佐ファミリーを心から応援したい
今、この瞬間も、岩佐まりさんはお母様のケアをしながら、新しい命を育んでいます。それは想像を絶する体力と精神力を要する仕事です。
私たちは、彼女のSNSを通じてその日常を垣間見ることしかできませんが、彼女が発信する一言一言は、日本中にいる「名もなきケアラー(介護者)」たちの光になっています。
「まりさん、無理をしないで」と言いたくなる気持ちもありますが、それ以上に**「あなたの選んだ道は、間違いなく尊いものです」**と、心からのエールを送りたいと思います。
岩佐まりさん、そしてお母様、旦那様、お子様たち。この新しい形の家族が、これからも笑顔(ときどき涙)で歩んでいけるよう、私たちは彼女の活動をこれからも注視し、応援し続けていきましょう。
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- 公式ブログ: 若年性アルツハイマーの母と生きる