あなたが現在見ているのは 黄金の朝と、喉を鳴らす至福:サラワク・ゴルフ・クラブ(KGS)の追憶

黄金の朝と、喉を鳴らす至福:サラワク・ゴルフ・クラブ(KGS)の追憶

ふと目を閉じれば、昨日のことのように鮮明に蘇る景色がある。それは、熱帯の湿り気を帯びた朝の空気、どこまでも高い空、そしてサラワク州クチンの地で私を虜にした「Kelab Golf Sarawak(KGS)」の光景だ。

数十年前、私が駐在員として過ごしたあの地で、週末のルーティンほど贅沢なものはなかった。

1. マタン山に抱かれる、静寂のティーオフ

クチンの朝は早い。まだ夜が明けきらぬ午前6時過ぎ、車を走らせてペトラ・ジャヤ地区へと向かう。サラワク川を渡り、近代的な州議会議事堂を横目にKGSへ到着すると、そこには都会の喧騒とは無縁の静寂が広がっていた。

KGSの象徴であるピラミッド型のクラブハウスが見えてくると、私の心は決まって高揚した。当時の私のお気に入りは、何と言っても「マタン/サントゥボンコース」だ。朝露に濡れたフェアウェイは鏡のように光り、遠くにそびえるマタン山のシルエットが、霧の中からゆっくりと姿を現す。

「おはよう」と挨拶を交わすキャディたちの屈託のない笑顔。日本のような堅苦しいマナーよりも、ゴルフを心から楽しもうとするおおらかな空気がそこにはあった。1番ホールのティーグラウンドに立ち、深く息を吸い込む。南国の力強い芝の香りが肺を満たす。ドライバーを振り抜けば、真っ白なボールが青い空へと吸い込まれていく。あの瞬間の解放感は、還暦を迎えた今でも、何物にも代えがたい「自由」の象徴として記憶に刻まれている。

2. スループレーという快楽

マレーシアのゴルフは、ハーフで休憩を挟まない「スループレー」が基本だ。太陽が昇るにつれて気温はぐんぐん上がり、ジリジリと肌を焼く。汗が噴き出し、体力が削られていく。しかし、それがいいのだ。18ホールを駆け抜けるその疾走感。池に捕まり、スコアに一喜一憂しながらも、頭の片隅には常に「あの楽しみ」が待っていた。

最終18番ホール。グリーンに乗せ、パットを沈める。心地よい疲労感とともにクラブハウスへ戻る頃、時刻はちょうど昼前。灼熱の太陽が真上から照りつける中、シャワーで汗を流し、サッパリとした着替えを済ませる。さあ、ここからがKGSの「真の後半戦」の始まりだ。

3. テラスで交わす、黄金の一杯

冷房の効いた室内もいいが、私はあえてオープンテラスの「Golfer’s Terrace」を選んだ。 席に着き、まず注文するのは、キンキンに冷えたタイガービールだ。大きなジョッキに注がれた黄金の液体、そして細かな泡。本来、車で来ている以上は慎むべきことだったかもしれないが、あの誘惑には勝てなかった。

「お疲れ様!」と心の中で乾杯し、一気に喉に流し込む。 ……くぅーっ、と声が漏れる。 喉を刺激する炭酸と、五臓六腑に染み渡る苦味。あの瞬間、私の細胞一つ一つが生き返るような感覚を覚えた。火照った体と、心地よく疲れた筋肉に、アルコールが優しく溶け込んでいく。視線の先には、今しがたまで歩いていた緑のフェアウェイ。この風景を肴に飲むビールは、どんな高級ホテルのバーで飲む一杯よりも格別だった。

4. 胃袋を掴んで離さない「焼豚」と「チャーハン」

そして、ビールに合わせるのは、迷うことなく「焼豚(チャーシュー)」と「チャーハン」だ。 KGSのレストラン「Pavilion」の中華料理は、クチン市内の専門レストランと比較しても引けを取らない、確かな味があった。

まず運ばれてくるのは、艶やかに輝く焼豚だ。表面は蜂蜜を塗って焼き上げたようなカリッとした食感と甘みがあり、噛みしめればジューシーな豚の脂が口の中に広がる。そこに、あの甘辛い特製ダレが絡む。これこそが、ビールの最高の相棒だった。一切れの焼豚を口に運び、間髪入れずにビールを流し込む。この無限ループに、何度身を委ねたことだろう。

続いて登場するのが、強火で一気に仕上げられたチャーハンだ。米の一粒一粒が油を纏ってパラパラと踊り、卵の黄色、ネギの緑、そして刻まれた具材が彩りを添える。シンプルながら、家庭では決して出せないプロの火力が生む香ばしさ。先ほどの焼豚をチャーハンの上に乗せ、自分だけの「特製焼豚チャーハン」として頬張るのが私流の贅沢だった。

ゴルフの反省会をしながら、あるいは次に挑戦するコースに想いを馳せながら、このボリューム満点の中華を胃に収めていく。この満腹感と幸福感こそが、駐在生活の孤独や仕事の疲れを癒やしてくれる最高のご褒美だったのだ。

5. 再訪の夢

クチンの空の下で過ごしたあの熱い時間は、今も色褪せることなく私の中に息づいている。

今のKGSはどうなっているだろうか。聞いたところによれば、あのピラミッド型の建物も、あの絶品の焼豚も、変わらずメンバーたちを迎え入れているという。

今度クチンを訪れるときは、もう「良くないこと」を気にせず、思う存分ビールを楽しめるように、ドライバーを雇って向かおう。そして、あの頃と同じようにマタン山を眺めながらティーオフし、同じ席で、同じチャーハンを注文したい。

人生の後半戦。あの懐かしのKGSは、単なるゴルフ場ではない。私にとって、若き日の情熱と、クチンの温かな風、そして「最高に美味い一杯」を思い出させてくれる、

現地旅行会社と「行きたい」を叶える海外旅行サービス【Oooh(ウー)】

コメントを残す

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)