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はじめに:テレビで見せる顔とは別の「真実の姿」
お昼の情報番組『バイキングMORE』の顔として、時に鋭く、時に毒舌に世相を斬ってきた坂上忍さん。テレビの中の彼は、潔癖症でギャンブル好き、独身を貫く「一癖ある芸能人」というイメージが強かったかもしれません。
しかし、現在の彼はそのキャリアのすべてを「動物保護」へと傾けています。なぜ彼は、華やかな芸能界の第一線から、泥にまみれて犬や猫の世話をする日々を選んだのか。
そこには、5歳でのデビュー以来、壮絶な荒波を生き抜いてきた坂上忍さんという一人の人間の、深い孤独と、再生への物語がありました。
1. 5歳で始まった「天才子役」としての宿命
坂上忍さんの芸能人生は、わずか5歳から始まりました。劇団若草に入団したきっかけは、大好きだった祖母を亡くし、心を閉ざしてしまった彼を心配した母親の勧めでした。
孤独な学校生活と「借金」の影
10代の坂上さんは「天才子役」としてお茶の間の人気を博しましたが、その裏側はあまりに過酷なものでした。父親が作った巨額の借金。自宅には借金取りが押し寄せ、彼が稼ぐギャラはすべて返済に消えていく日々。
「学校に居場所は一秒もなかった」と本人が振り返る通り、有名人であることで凄惨ないじめにも遭いました。教科書は破かれ、机は放り投げられる。そんな環境にあっても、母を助け、家族を支えるために、彼は「子役」を辞めることが許されなかったのです。
逃げ場のない青春
普通の子供が享受する「放課後の遊び」や「部活動」とは無縁の世界。大人たちに囲まれ、数字と期待に追われる日々の中で、彼の心には深い人間不信と、どこか冷めた観察眼が養われていきました。この時期の「子供時代を奪われた経験」が、後に彼を動物保護へと向かわせる大きな伏線となります。
2. 俳優から司会者へ、そして「結婚」という決断
20代、30代と俳優として着実にキャリアを積み、40代でバラエティの世界へ。その歯に衣着せぬ発言が支持され、再ブレイクを果たした坂上さん。プライベートでは、一度の離婚を経て「自分は一生独身でいい」と公言していました。
14年の愛を実らせた再婚
そんな彼が2023年、14年間連れ添ったパートナーの女性と再婚したニュースは、多くのファンを驚かせました。 一度目の結婚で感じた「自分は結婚不適合者だ」という呪縛。しかし、現在の奥様は、坂上さんの極端な生活サイクルや、次々と増えていく保護犬・保護猫たちへの深い愛情を誰よりも理解し、共に歩んできた人でした。
この結婚は、単なる形としての入籍ではなく、彼がこれからの人生を「動物たちを守る活動」に捧げるための、家族としての「けじめ」でもあったのです。
3. 「さかがみ家」の設立:寄付に頼らない本気の挑戦
2022年4月、坂上さんは私財を投じて千葉県に動物保護ハウス「さかがみ家」をオープンさせました。これは単なる芸能人のボランティア活動の域を遥かに超えたものです。
「ビジネス」としての保護活動
坂上さんが掲げたのは、これまでの愛護活動の常識を覆す**「自立型運営」**でした。
- 寄付に頼らない: 寄付金が途絶えれば活動も止まってしまう。そうならないよう、グッズ販売やカフェ運営などで自ら資金を稼ぎ、運営を継続させる仕組み。
- スタッフの雇用: ボランティアではなく、給与を支払う「プロ」としてスタッフを雇う。
- 徹底した環境整備: 潔癖症の彼らしい清潔さと、広大な敷地でのびのびと過ごせる施設。
なぜそこまで「本気」なのか
坂上さんはよく「20匹救うより、目の前の1匹を確実に幸せにしたい」と口にします。彼にとって、保護犬たちは「ペット」ではなく、かつての自分と同じように「大人の都合に振り回され、居場所を失った子供たち」に見えているのかもしれません。
4. 動物たちと暮らす「超ハードな日常」
坂上さんの朝は早いです。深夜3時か4時には起床し、20頭を超える犬たちを数回に分けて散歩させます。
命に寄り添う覚悟
散歩、掃除、食事の準備。仕事に行くまでの数時間を、彼はすべて動物たちのために費やします。また、保護犬の中には病気を抱えた子や、シニアの繁殖引退犬も多く含まれます。 最期を看取る辛さを何度も経験しながらも、彼は歩みを止めません。「この子たちを幸せにすることが、自分の生きる意味」と言わんばかりの献身ぶりです。
5. 繁殖引退犬や保護犬への想い
この記事を読んでいる方の中にも、保護犬と一緒に暮らしている方がいらっしゃるかもしれません。坂上さんが特に心を砕いているのは、劣悪な環境で「産む機械」として扱われてきた繁殖引退犬たちの保護です。
彼らが初めて芝生を歩いた時の戸惑いや、初めて人間に甘えた瞬間の喜び。その一つひとつに立ち会うことが、坂上忍という一人の男の傷ついた過去をも癒やしているようにも見えます。
結びに:坂上忍が私たちに教えてくれること
子役として「大人」に翻弄された少年時代。 借金返済のためにがむしゃらに働いた青年時代。 そして今、彼は自らの意志で、自らの稼いだお金で、「声なき命」を守るために生きています。
坂上忍さんの人生は、「奪われた過去は変えられないが、その痛みを力に変えて、誰か(何か)の救いになることはできる」ということを、その背中で証明しているのではないでしょうか。
テレビの中の毒舌な姿も、保護ハウスで犬と戯れる優しい笑顔も、どちらも坂上忍という人間の真実です。私たちはこれからも、彼の「本気の挑戦」から目が離せそうにありません。