高樹澪(たかき みお)―

歌手として輝き、女優として深化し、病を越えて再び歩き始めた人生の物語**


プロフィール

名前:高樹 澪(たかき みお)
生年月日:1959年12月31日
出身地:福岡県
職業:女優・歌手
代表作:『モーニング・ムーンは粗雑に』『ウルトラマンティガ』『スチュワーデス物語』ほか
代表曲:『ダンスはうまく踊れない』
特記事項:片側顔面痙攣の闘病を公表、開頭手術を経て復帰。近年は長年の事務所を退所しフリーで活動。


幼少期からの原点――“引っ込み思案の娘”が劇団へ

高樹澪さんの芸能人生は、意外にも“引っ込み思案を心配した母の一言”から始まる。小学校2年生の頃、母がその性格を矯正しようと、横浜市内の劇団「いろは」へ入団させたことが最初のきっかけだった。子どもながらにドラマ出演の経験も積み、舞台の空気や表現する喜びを知る。このとき植え付けられた「表現することへの感覚」は、後の女優人生の礎となった。

一方で、芸能界をそのまま進んだわけではない。高校卒業後、当時の第一勧業銀行に就職し、数年間は金融機関で働いていた。しかし、安定した生活をしながらも、どこか満たされない“何かが違う感覚”があった。やがて会社を退職し、かつて触れた「表現の世界」へと戻る決意を固める。この選択こそが、後の飛躍につながっていく。


映画主演デビューと歌手としての大ヒット

芸能界復帰後の大きな転機は、1981年の映画『モーニング・ムーンは粗雑に』の主演に抜擢されたことだ。新鮮な存在感と透明感のある声が評価され、挿入歌も担当することになった。これをきっかけに音楽活動も本格化していく。

そして1982年、シングル『ダンスはうまく踊れない』が大ヒット。独特のハスキーな歌声と感情の乗った歌唱が多くの人の心を掴み、一躍歌手としての知名度を決定づけた。当時、映画の関係者の紹介で出会った桑田佳祐氏から歌のアドバイスを受けたというエピソードも、彼女の音楽的な成長を支えた重要な出来事である。


女優としての地位の確立――幅広い役柄を自在に演じ分ける存在に

歌手活動と並行して、女優としても高樹澪さんは多くの作品に出演した。80年代には『スチュワーデス物語』などの人気ドラマに出演し、演技でも才能を示していく。その後も映画・舞台・バラエティまで幅広く活躍する中で、特に印象深い役の一つが、1996年の『ウルトラマンティガ』だ。

シリーズ初の女性隊長として描かれた「イルマ・メグミ隊長」は、知性・強さ・温かさを併せ持つキャラクターで、今もファンの間で高く支持されている。子ども番組という枠を超え、“大人が憧れる女性像”を体現した役でもあった。


突然の異変――片側顔面痙攣との長い闘い

順調に見えた芸能活動の裏で、彼女を苦しめていたのが「片側顔面痙攣」という病だった。右半分の顔に痙攣が生じる症状で、発症は1990年代後半頃。原因が特定しづらい病気で、疲労やストレスが重なるほど悪化し、睡眠不足や精神的な負担も増していく。演技や歌といった繊細な表現を必要とする仕事において、顔の痙攣は致命的だった。

やがて仕事が思うようにできない時期が続き、2000年代に入ると芸能活動は大幅に縮小する。2004年〜2009年頃にかけては、ラーメン店やパチンコ店で働きながら生活を立て直していった。「普通の生活に戻ったからこそ見えたものがたくさんあった」と後に語っているように、この時期は精神的な成長につながる時間でもあった。


開頭手術、そして復活――再び舞台へ

2006年、ついに原因である“神経と血管の癒着”が特定され、開頭手術を受ける決断をする。5時間以上におよぶ大手術は無事成功し、長年苦しんだ痙攣は治まった。まさに「人生が戻ってきた瞬間」だった。

手術から時間を経て体力やメンタルも回復し、2009年頃から芸能活動を再開。舞台、ドラマ、トーク出演など、以前よりも穏やかで自由なスタイルでの活動を続けている。


再婚と心の安定、そして新しい生き方

2013年には再婚し、大切なパートナーと共に新たな人生を歩み始めた。長い闘病やキャリア上の困難を乗り越えた彼女にとって、この再婚は大きな心の支えとなったという。

また近年では、長く所属していた事務所を退所し、フリーとして活動する道を選んでいる。所属事務所の社長の死去や、自分の縁で仕事が来るようになったことが決断の理由と語られている。“稼がなきゃ”という重圧から解放された今、表現者としてより柔らかく、自由な活動スタイルが際立っている。


現在の高樹澪――病を越え、人生を歌い続ける存在

闘病、離婚、キャリアの停滞、そして再起――。高樹澪さんの人生は、華やかさの裏に数々の試練があった。しかし彼女は決して歩みを止めなかった。むしろその経験が、今の彼女の深みと輝きを作り上げている。

舞台では力強く、歌では柔らかく、トークではユーモアと経験に裏打ちされた言葉を語る。病を乗り越えたからこそ響く言葉と存在感は、同じように悩みを抱える人に寄り添う力を持っている。

今もなお、表現者としての道を歩み続ける高樹澪さん。彼女の物語は、これからも多くの人に勇気と希望を与えてくれるだろう。

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