サラワク州クチンでの静かな生活についてお話ししてきましたが、今回は視点を少し広げ、マレーシアという国全体の概略についてお伝えします。
私が数十年前にこの国に降り立った時と比べ、現在のマレーシアは驚くほどの発展を遂げました。しかし、その根底に流れる「多様性への寛容さ」は、今も昔もこの国の最大の魅力として息づいています。
Contents
1. マレーシアの基本プロフィール:二つの顔を持つ国
マレーシアは、東南アジアの中心部に位置し、南シナ海を挟んで「マレー半島」と「ボルネオ島(東マレーシア)」の二つの地域に分かれています。
- 面積: 約33万平方キロメートル(日本から九州と四国を除いた程度の広さ)
- 人口: 約3,300万人
- 首都: クアラルンプール(KL)
特筆すべきは、その地理的な多様性です。近代的な高層ビルが立ち並ぶクアラルンプール、英国植民地時代の面影を残すペナン島、そして私たちが愛してやまない大自然が残るサラワクやサバ。一つの国の中に、全く異なる表情の地域が共存しています。
2. 「真のアジア」を体現する多民族社会
マレーシアの観光スローガン「Malaysia, Truly Asia(マレーシア、真のアジア)」は、まさにこの国の実態を表しています。
人口の内訳は、マレー系(約7割)、中国系(約2割)、インド系(約1割)、そして多くの先住民族で構成されています。
- マレー系: イスラム教を信仰し、穏やかで家族を大切にする人々。
- 中国系: 経済を牽引し、活気あふれる商売っ気と食への情熱を持つ人々。
- インド系: 色鮮やかなヒンドゥー文化と、深い知性を感じさせる人々。
公用語はマレー語ですが、英語が広く通じるのも駐在員や旅行者にとって大きな利点です。異なる宗教、言語、習慣を持つ人々が、同じテーブルでそれぞれの食事(ハラル料理、中華料理、カレーなど)を囲む光景こそが、マレーシアの日常であり、世界に誇るべき「調和」の姿です。
3. 急成長を遂げる経済と「ルックイースト政策」
日本とマレーシアには深い絆があります。1980年代、当時のマハティール首相が提唱した「ルックイースト(東方)政策」により、日本をモデルにした近代化が進められました。
かつては天然ゴムや錫(すず)の輸出が主軸でしたが、現在は電子機器の製造やパーム油、そして石油・天然ガスの産出が経済を支えています。特にクアラルンプールの象徴「ペトロナス・ツインタワー」を見上げれば、この国のダイナミズムを肌で感じることができるでしょう。
一方で、物価は日本の3分の1から2分の1程度(項目によりますが)に抑えられており、その生活のしやすさから「日本人が住みたい国」として長年上位に選ばれ続けています。
4. 旅人を魅了する三つのキーワード
マレーシアをブログで紹介する際、欠かせない要素が以下の三つです。
① 究極の「食」のパラダイス
多民族国家であることは、食の選択肢が無限にあることを意味します。 ナシレマ(マレーの国民食)、チキンライス(中華系)、ロティ・チャナイ(インド系)、そしてサラワク・ラクサ。毎日三食、異なる文化の味を楽しめる国は、世界中を探してもそう多くはありません。
② 世界遺産と歴史のレイヤー
マラッカやジョージタウン(ペナン)に行けば、大航海時代からのポルトガル、オランダ、イギリスの支配の歴史が、美しい建築物として残っています。歴史の積み重なりが、街全体を美術館のように彩っています。
③ 太古から続く熱帯の自然
ボルネオ島のジャングルはもちろん、マレー半島中央部のタマンヌガラ(国立公園)などは、数億年前から続く世界最古級の熱帯雨林です。近代都市から数時間で、野生の象や虎、珍しい植物が生息する森へアクセスできるギャップこそが、マレーシアの凄みです。
5. 元駐在員から見た「マレーシアの精神」
私がこの国に住んで最も感銘を受けたのは、人々の「テリマ・カシ(ありがとう)」の精神と、「マナ・ボレ(なんとかなるさ)」という楽天的な強さです。
数十年前に私が経験した「ゆったりとした時間」は、デジタル化が進んだ今も、マレーシア人の気質の中にしっかりと残っています。彼らは、他人との違いを否定せず、そのまま受け入れる強さを持っています。
結びに:変わりゆくマレーシア、変わらない温かさ
マレーシアは今、デジタル経済や観光のDX化など、凄まじいスピードで進化を続けています。しかし、一歩路地に入れば、スパイスの香りが漂い、見知らぬ通行人が笑顔で挨拶してくれる温かさは変わりません。
初めてマレーシアを訪れる方は、そのコントラストに驚くことでしょう。そして二度、三度と訪れるうちに、この国の「心地よい雑多さ」が癖になっていくはずです。
私のブログでは、この偉大なる多民族国家マレーシアの「今」と、駐在時代から変わらない「本質」を、少しずつ紐解いていきたいと思います。