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子役から大ブレイク、そして大人の女優・歌手として歩み続ける軌跡
1970年代後半から80年代にかけて、一世を風靡した“清純派アイドル”といえば、必ずその名が挙がるのが伊藤つかささんである。
その柔らかな笑顔と透明感のある声、そしてどこか守ってあげたくなるような可憐さで、多くの人々の心をとらえた。だが、彼女の魅力は単なるアイドル性にとどまらない。長い芸能生活を通じて、子役から女優、歌手、舞台俳優へと着実に歩みを重ね、いまも変わらぬ誠実な姿勢で活動を続けている。
芸能界入りのきっかけと子役時代の活躍
伊藤つかささんは1967年2月21日、東京都で生まれた。
芸能界入りのきっかけは、小学生の頃にスカウトを受けたことから。天真爛漫で、どこか儚げな雰囲気を持っていた彼女は、すぐに子役としてテレビドラマに出演し始める。1978年放送のドラマ『ひまわりの詩』では、既に自然な演技で注目を集め、業界関係者の間では「透明感のある新星」として注目されていた。

その後、NHKや民放ドラマなどで着実に経験を重ね、1980年、彼女の名を全国に知らしめるきっかけとなる作品が訪れる。それが、TBSドラマ『3年B組金八先生・第2シリーズ』である。
『3年B組金八先生』第2シリーズでの鮮烈な印象
伊藤つかささんが出演したのは、第2シリーズ。
当時、すでに第1シリーズで社会現象を巻き起こしていた「金八先生」は、第2シリーズでも等身大の中学生たちを描く群像劇として注目を集めていた。伊藤さんが演じたのは、思春期の揺れる心を繊細に表現する女子生徒役。その演技は“素朴でリアル”と評され、視聴者の共感を呼んだ。
一見控えめながらも、内に秘めた芯の強さを感じさせる彼女の存在は、同世代の視聴者はもちろん、親世代の心にも深く刻まれた。
この作品での印象が、のちのアイドルデビューへとつながっていく。
歌手デビューと「少女人形」の大ヒット
1981年、伊藤つかささんは『少女人形』で歌手デビューを果たす。
透明感に満ちた歌声と、可憐な表情が相まって、デビュー曲ながらいきなり大ヒット。オリコン上位にランクインし、テレビ・ラジオ・雑誌の取材が殺到した。
だが当時、彼女はまだ14歳。未成年であることから、夜の生放送番組――たとえば『ザ・ベストテン』など――には、年齢制限のため出演できなかったという有名なエピソードがある。
実際、『ザ・ベストテン』では「今夜も伊藤つかささんは年齢の関係で出演できません」とテロップが流れ、彼女の代わりにスタジオには“つかさ人形”が置かれたことも。
このユニークな演出は番組ファンの間でも話題となり、逆に彼女の“儚く遠い存在感”を強調する結果となった。多忙な芸能活動の中でも、伊藤さん本人は「夜遅くまで生放送に出られないのはちょっと残念だったけど、学生としての生活も大事にしていた」と語っている。
アイドル全盛期の多忙な日々と“癒しの象徴”
1980年代前半、日本はまさにアイドル黄金期。
松田聖子さん、河合奈保子さん、柏原芳恵さんなど、才能と個性に溢れたアイドルが次々に登場する中、伊藤つかささんは“清純派の象徴”として際立った存在感を放っていた。
彼女のスケジュールは超過密。朝は学校、昼は撮影、夕方からは音楽番組や雑誌取材、そして夜は翌日の台本読み――という日々が続いた。
時には睡眠時間がわずか数時間ということもあったが、彼女は「自分を応援してくれる人がいるから頑張れた」と語る。
一方で、純粋で飾らない性格が災いし、芸能界のスピード感についていけず、体調を崩すこともあったという。
だがそのひたむきな姿勢が、同年代のファンの共感を呼び、“癒し系アイドル”としての地位を確立していった。
結婚やプライベート、そして新たな挑戦
1990年代に入ると、伊藤さんはドラマや舞台への出演を中心に活動を続けつつ、少しずつプライベートの時間も大切にするようになる。
結婚については一度話題になったことがあるが、現在は独身で、家庭を持つよりも自分らしい生き方を追求している。
彼女の人柄は、周囲のスタッフから「誰に対しても優しく、常に自然体」と評されており、芸能界内でも長く信頼を集めている。
最近の活躍――再評価と成熟した魅力

近年、伊藤つかささんは再び注目を集めている。
テレビドラマや舞台出演のほか、音楽活動にも精力的に取り組み、デビュー40周年を迎えた際には記念ライブやアルバムを発表。デビュー当時の楽曲を今の声で歌い直す企画では、「変わらない優しさと、深みを増した表現力」と高い評価を受けた。
また、SNSやYouTubeなどを通じて、ファンとの距離を大切にする活動も展開している。かつてのファンが大人になり、今度は親子で彼女の歌を聴く――そんな世代を超えた交流が生まれているのも印象的だ。
最近では、舞台『八月のシャハラザード』などに出演し、女優としての存在感を再び確立。自然体の演技と成熟した表情には、「永遠の少女」と呼ばれた時代から培ってきた人生の深みが感じられる。
終わりに――変わらぬ“つかさ色”の輝き
伊藤つかささんの芸能生活は、華やかさとともに誠実さで彩られている。
デビューから40年以上を経たいまもなお、彼女の言葉や歌には“優しさ”と“芯の強さ”が共存している。
「無理に背伸びをせず、自分のペースで歩いてきたことが、いまの自分を作ってくれた」と語る伊藤さん。
その姿勢は、時代が変わっても決して色あせない。
かつて“少女人形”と呼ばれた彼女は、いまや多くの人にとって“永遠に心を癒す存在”であり続けている。