時任三郎:唯一無二の存在感を放つ俳優・歌手の軌跡

 最近息子である時任勇気(ときとう ゆうき)さんが注目されていますが、父である時任三郎さんも円熟味を増した演技で活躍中です。そんな時任三郎さんについて調べてみました。 

芸能界への道:異色のキャリアの始まり

 時任三郎さんは、1958年2月4日、東京都に生まれました。本名は時任 肇(ときとう はじめ)です。幼少期から目立つことを好むタイプではなく、どちらかというと内向的で、野球に熱中する少年時代を過ごしました。高校卒業後は、プロミュージシャンを目指すわけでも、俳優を志すわけでもなく、ごく普通の学生として、大学に進学します。

 彼の人生の転機となったのは、大学在学中に始めたアルバイトでした。それは、モデルとしての活動です。当時、日本人離れした彫りの深い顔立ちと、すらりとした長身はファッション業界で注目を集め、雑誌やCMなどで活躍するようになります。しかし、彼はこのモデルの仕事に飽き足らず、自分の可能性をさらに広げるべく、俳優の道を模索し始めます。

 本格的に俳優を目指すようになったのは、大学を中退し、劇団「状況劇場」を主宰していた唐十郎に師事したことがきっかけです。しかし、唐十郎のもとでの修行は、彼が想像していたものとは大きく異なっていました。唐十郎の演出は非常に厳しく、時任三郎さんは肉体的にも精神的にも追い込まれる日々を送ります。この過酷な経験は、時任の役者としての基礎を築き、どんな困難にも立ち向かう強靭な精神力を養うことになりました。

 そして、1980年、ついに映画『ミスター・ミセス・ミス・ロンリー』で俳優としてデビューを果たします。この作品は、彼にとっての出発点であり、俳優・時任三郎が誕生した瞬間でした。

俳優としての軌跡:多彩な役柄を演じきる演技力

 時任三郎さんの俳優としてのキャリアは、デビュー以来、常に進化し続けています。その魅力は、単なる二枚目俳優にとどまらない、多彩な役柄を演じ分ける演技力にあります。

 特に彼の名を一躍有名にしたのは、テレビドラマ『ふぞろいの林檎たち』シリーズ(1983年〜)ではないでしょうか。山田太一脚本によるこのシリーズは、四流大学生たちの青春を描いた群像劇で、社会現象になるほどの大ヒットとなりました。中井貴一さん、柳沢慎吾さんらとともに、時任さんが演じた等身大の若者像は多くの視聴者の共感を呼び、一躍人気俳優としての地位を確立しました。

 映画では、『海燕ジョーの奇跡』(1984年)で実力を大いに発揮されました。沖縄を舞台にしたこの映画では、主演を務め、敵対する組の組長を射殺してフィリピンに逃亡する若いヤクザ役を熱演しました。この作品での演技が評価され、報知映画賞主演男優賞を受賞するなど、俳優としての実力を広く認められるきっかけとなりました。

 また、社会派ドラマでの存在感も際立っています。1992年に放送された『刑事貴族2』では、クールで情熱的な若手刑事を演じ、新たなファン層を獲得しました。さらに、2003年のテレビ朝日系ドラマ『Dr.コトー診療所』では、離島の診療所に赴任してきた医師・五島健助(吉岡秀隆)を支える漁師・和田一範役を演じ、その素朴で優しい人柄と、吉岡秀隆との絶妙な掛け合いが大きな話題となりました。この作品は、彼の代表作として多くの人々の記憶に刻まれています。

 最近では、2019年のTBS系ドラマ『グランメゾン東京』で、木村拓哉演じる主人公のライバルシェフ役を演じ、その重厚な演技で作品に深みを与えました。彼のキャリアは、主演から脇役まで、どんな役柄でもその存在感を発揮し、作品をより魅力的なものにしています。

歌手としてのキャリア:心に響く歌声

 俳優として活躍する一方、時任三郎さんは歌手としてもその才能を発揮してきました。彼の歌声は、俳優としての演技と同様に、温かみがあり、聴く人の心に深く響きます。

 1981年、シングル『川の流れを追いかけて』で歌手デビュー。その後もコンスタントに楽曲を発表し、特に1980年代後半から90年代にかけては、テレビドラマの主題歌などを数多く担当しました。代表曲の一つに、1987年にリリースされた『心の声』があります。この曲は、彼の歌手としての魅力を凝縮したような、力強くも優しいバラードで、現在も多くのファンに愛され続けています。

 2000年代に入ってからも、自身のライブ活動を積極的に行い、ファンとの交流を深めています。俳優として、また歌手として、それぞれの分野で独自の魅力を放ち続ける姿は、まさに多才なエンターテイナーと言えるでしょう。

プライベートと家族:息子・時任勇気との絆

 時任三郎のプライベートは、あまり多くの情報が公にされていませんが、彼は一貫して家族を大切にする人物として知られています。結婚し、一男一女に恵まれ、愛する家族に囲まれて暮らしています。特に最近、注目を集めているのが、息子である時任勇気(ときとう ゆうき)さんの存在です。

俳優として歩み始めた息子・時任勇気

 時任勇気さんは、1992年10月2日生まれ。父親と同じく俳優として活動しています。父とは似て非なる、彼自身の魅力で着実にキャリアを積み上げています。

 時任勇気さんが芸能界入りしたのは、大学卒業後の2015年です。当初は父親の七光りを避けるため、時任三郎の息子であることを伏せて活動を始めました。しかし、その甘いマスクと、父親譲りの整った顔立ちから、やがて時任三郎の息子ではないかと噂されるようになります。

 2016年に出演したテレビドラマ『とと姉ちゃん』で、父親が時任三郎さんであることが報じられると、一気に注目を集めました。しかし、彼はその注目をプレッシャーではなく、自分を成長させるための糧と捉え、真摯に演技と向き合っています。

 彼の演技は、若手俳優らしく、エネルギッシュで瑞々しい魅力に溢れています。近年では、2021年のテレビドラマ『ハコヅメ~たたかう!交番女子~』や、2023年の『Dr.コトー診療所』の映画版にも出演し、父親の代表作に同じく出演するという、運命的な共演も果たしました。

俳優として、父として。時任三郎の現在地

 現在、時任三郎さんは60代を迎えましたが、その活動は衰えることを知りません。俳優として、円熟味を増した演技で、見る者に深い感動を与え続けています。また、自身の趣味であるゴルフやマリンスポーツを楽しみながら、心身ともに充実した日々を送っているようです。

 彼の人生は、決して順風満帆なものではありませんでした。しかし、どんな時も自分自身と向き合い、誠実に生きる姿は、多くの人々に勇気を与えてきました。

 そして、息子・時任勇気の活躍は、彼にとって大きな喜びであると同時に、彼自身もまた、俳優として、一人の父として、さらに成長していくための原動力となっていることでしょう。

 時任三郎さんは、これからも私たちに感動を与え続けてくれる唯一無二の存在です。彼のこれからの活躍に、そして息子・時任勇気さんとの親子共演など、新たな一面を見せてくれることを楽しみにしています。

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