塩見三省 - 「アウトレイジ ビヨンド」、「アウトレイジ 最終章」で迫力のヤクザを演じた名優

 塩見三省さんをご存じですか? 北野武監督の「アウトレイジ ビヨンド」(2012年)での花菱会若頭補佐の中田役で、その凄みに圧倒されました。次作「アウトレイジ 最終章」では、脳出血後の体調でも、凄みのある役をやられていました。強面役が多いのかな、と思い出演作など略歴を調べてみました。

経歴

 塩見三省(しおみ さんせい)さんは、京都府綾部市出身の俳優で、1948年1月12日生まれです。​同志社大学を卒業後、1978年に演劇集団「円」に入団し、舞台俳優として活動を開始しました。​別役実や太田省吾の作品、つかこうへい作・演出の舞台「今日子」「幕末純情伝」「熱海殺人事件~塩見三省スペシャル」などに出演し、舞台での実績を積み重ねました 。
 1991年の映画『12人の優しい日本人』(中原俊監督)への出演を機に、映画やテレビドラマにも活動の場を広げました。​特に、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』(2013年)で演じた「琥珀の勉さん」役で広く知られるようになりました 。​

 2014年には脳出血で倒れましたが、懸命なリハビリを経て2016年に復帰。​復帰後初の映画出演は、北野武監督の『アウトレイジ 最終章』(2017年)で、同作で第39回ヨコハマ映画祭・助演男優賞、第27回東京スポーツ映画大賞・主演男優賞を受賞しました 。
 ​2025年には、松重豊監督の『劇映画 孤独のグルメ』に松尾一郎役で出演しています 。​
 また、著書『歌うように伝えたい』の文庫版が筑摩書房より2025年1月14日に刊行されました 。

 塩見三省さんは、舞台・映画・テレビドラマと幅広いジャンルで活躍し、名脇役として多くの作品に貢献してきました。​その味わい深い演技と存在感で、多くのファンに愛されています。

強面役が多いの?

 塩見三省さんは『アウトレイジ ビヨンド』(2012年)以前から、ヤクザや裏社会の人物など、強面で一癖ある役柄をいくつか演じてきています。
 特に、北野武監督作品や、硬派な刑事ドラマ・サスペンスドラマにおいては、その静かな語り口と目の奥の鋭さで、不気味さや威圧感を伴う人物像を巧みに演じていました。ただし、『アウトレイジ ビヨンド』での中田(関東貫道会幹部)役は、その中でも群を抜いてインパクトが強く、彼のキャリアの中でも特に強烈な「ヤクザ像」として印象に残っている作品です。
 それ以前に出演した代表的な作品で、やや裏社会的な雰囲気や強面の役を演じた例には以下があります。『ミンボーの女』(1992年、伊丹十三監督):直接のヤクザではないものの、暴力団関係の描写が多く、裏社会の存在を匂わせるキャラクターが登場する作品で、塩見もその中で陰のある存在を演じていました。また、刑事ドラマやVシネマへの出演:『相棒』シリーズなどでも、ヤクザではなくても「一筋縄ではいかない人物」を演じることがありました。
 ただし、本格的なヤクザ役として大きく注目されたのは、やはり『アウトレイジ ビヨンド』が決定打といえます。その後の『アウトレイジ 最終章』(2017年)での続投も含め、塩見さんの「怖さ」が完全に開花した作品でした。
 もっと昔のVシネマ時代までさかのぼると、名もないヤクザや刑事役も多数演じており、実は“隠れた名ヤクザ俳優”といえる存在でもあります。

「アウトレイジ 最終章」(2017年)以降の活躍は?

 『アウトレイジ 最終章』(2017年)以降、塩見三省さんは映画やテレビドラマにおいて、さまざまな役柄で活躍を続けています。以下は主な出演作の一覧です。

映画出演
『初恋』(2019年)
塩見さんは組長代行役を演じ、園子温監督のバイオレンス・ラブストーリーで存在感を示しました。
『駅までの道をおしえて』(2019年)
主人公サヤカの祖父役として出演し、温かみのある演技を披露しました。
『罪の声』(2020年)
ニシダ役で出演し、実在の事件をモチーフにした社会派サスペンスで重要な役割を果たしました。
『劇映画 孤独のグルメ』(2025年)
松重豊さん主演・監督による作品で、松尾一郎役として出演しています。

テレビドラマ出演
『恋の三陸 列車コンで行こう』(2016年、NHK)
脳出血からの復帰後初のドラマ出演で、温かみのあるキャラクターを演じました。
『相棒 Season15』(2016年、テレビ朝日)
ゲスト出演し、物語に深みを加える役柄を担当しました。
『遺留捜査』(2017年、テレビ朝日)
ゲスト出演し、事件の鍵を握る人物を演じました。

これらの作品では、塩見さんの幅広い演技力が発揮され、ヤクザ役から温厚な祖父役まで多彩なキャラクターを演じ分けています。特に『初恋』や『罪の声』では、裏社会の人物や事件に関わる重要な役どころを担い、観客に強い印象を残しました。

俳優業以外でもご活躍です。

 塩見三省さんは近年、俳優業だけでなく、以下のようなさまざまな分野でも活動の幅を広げています。

1. エッセイ執筆・著書の刊行
著書『歌うように伝えたい』(2022年、2025年に文庫版刊行)
→ 俳優人生や闘病体験、リハビリ生活、そして“言葉”への想いを綴ったエッセイ集です。
→ 一部は舞台のセリフや朗読劇での台詞術にも通じ、俳優・表現者としての視点が多く語られています。

2. 講演活動・朗読
講演会
→ 自身の脳出血からの復帰体験をテーマに、全国で講演を行っています。
→ 「いのち」「表現」「リハビリ」「祈り」などをキーワードに、人間の再生や希望について語る内容が中心です。

朗読活動
→ 文学作品や詩の朗読なども精力的に行っており、その「声」に魅了されるファンも多いです。
→ 彼の深く静かな語りは、俳優としての演技とはまた違った形での表現となっています。

3. 舞台活動(小規模ながら継続)
近年は大劇場ではなく、朗読劇や一人芝居、トークイベント形式の舞台などに出演。

身体への負担を抑えながらも、舞台表現を継続しようとする姿勢が評価されています。

4. リハビリ啓発活動
自らの経験をもとに、リハビリの重要性、継続することの意義を発信しています。

医療関係のフォーラムや市民イベントなどに参加し、「あきらめない生き方」をテーマに語ることもあります。

最後に

 塩見三省さんは、ただ俳優業だけでなく、病気を患った後は、俳優に戻っただけでなく、「生き直し」をテーマに多くの人と関わる活動を続けています。
 その姿は“役者”という枠を超えた「表現者」「語り手」としての深みを感じさせます。

 お体に気をつけられて、特に俳優として「名演技」を見せてもらいたいものです。

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